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夜のせい

吉本ばななTUGUMIの、夜のせいという章が素敵だよ、と友達が教えてくれた。

TUGUMI、中学生の時に読んだなあ、なつかしい。

内容はあまり覚えていないけれど。だから夜のせいという章があったことも覚えていなかった。

本棚からTUGUMIを持ってきて、新鮮な気持ちでページをめくってゆく。

 

「つぐみ、あの人のこと本当に気に入っているのね」

ますます深さと濃度の増す夜の中で、私は笑った。

「今のところはな」

つぐみはため息をついて言った。

「つぐみ、変だったもの。気づいてた?」

「何を」

「つぐみ、あの人に、いつもと全然同じしゃべり方してたよ」

私はずっと気づいていたが、黙っていたのだ。つぐみはいつも男の前では普通のお嬢さんに戻るけれど、さっきは、いつもの下品なつぐみで、私はわくわくするほど面白かった。

「あっ」

とつぐみは言った。

「どうしたの」

「全然、気づかなかった。そうだ、うっかりしてた。しまった、あれじゃあスケ番だ。あーあ」

つぐみは言った。

「あれはあれで……面白いし」

私は言った。夜風に吹かれて眉をひそめ、前方を見つめたままつぐみは言った。

「まあ、いいや。きっと、夜のせいだろう」

TUGUMI/吉本ばなな/中央公論社

 

最後のつぐみの一言が好き。

夜のせい。そう言えば、なんだかすべてが許されそうな気がする。

友達はどの部分が素敵だと思ったんだろう。気になる。

もうちょっと、話したかったなあ…。