はんぶんのあんぱん

私はあんぱんが大好きだ
お母さんが昨日あんぱんを買ってきてくれた。本当は今日の朝ごはんのときに食べたかったのだが、あまりお腹が空いていなかったので食べないで学校へ行くことにした。
「お母さーん、このあんぱん残しておいてね。帰ったら食べるから。」
「はいよー。残しておいても何も、あんぱんなんてあなた以外食べる人いないわよ。」
「あ、そっか。お母さんあんぱん好きじゃないもんね。」
学校から帰ってきた。すごくお腹が空いている。手を洗ってるんるん気分でリビングへ行った。テーブルの上の少し昭和っぽいお皿にあんぱんが乗っている。
しかしー半分しかない。今朝は確かにまんまるだったあんぱんが半分しかないではないか!お母さんが食べたのか?いや、それはない。だってお母さんはあんぱんが好きではないのだから。
じゃあ一体誰が…?
色々と考えを巡らせていたら、どこからかリンリンリンリンと鈴のような音が小さく聞こえてきた。リンリンリンリン、リンリンリンリン…誰かが歌っているようにも聞こえる。辺りを見回してみた。何もない。もう一度ゆっくりと辺りを見回してみる。ゆっくり、じっくり、ぐるーっと。そしたら、冷蔵庫の横っちょに小さな穴が空いているのを見つけた。
近くに行ってみるとさっきの鈴のような音がする。耳を澄まして聞いてみた。すると、
「あんぱんあんぱん まーるいあんぱん
たべるとほっぺたおっこっちまう
おいしいおいしい まーるいあんぱん」
と歌う声が聞こえた。
中に誰かいるのだろうか?
その時、穴から青と白のボーダー柄の何かがでてきた。こちらをじっと見ている。よく見るとなんだか人っぽい。小人だ。私はその小人にあんぱんについて聞いてみることにした。
「あの、すみません。私のあんぱんって…」
「あ、あんぱんですね、半分いただきました」
「やっぱりそうですか。あれ、すごい食べるの楽しみにしてたんですけど。」
「へ〜」
「うわっ腹立つ。でもまあまだ半分残ってるからいいんですけど。…でもなぜあんぱんを?」
「春眠です」
「はい?」
「春眠に備えて食べ物を集めているんです。」
「え、冬眠じゃなくて、春眠ですか?」
「はい」
「…へ〜、春眠なんてあるんだあ。ほふ〜ん…」
「納得しちゃうんだ」
「何か?」
「いえ、なんでも。春ってぽかぽかとあたたかいでしょう。なのでとっても眠くなってしまうのですよ。そのせいで全然働けなくなる。」
「まあ、そうですよね。働けなくなるってほどではないけど。」
「だから、もうじゃあ春の間はずっと眠っていようと。それといろんな植物の花粉で体が埋もれてしまうのです。私たち、体が小さいものですから。あれはもう…はあああ…かゆい〜あああ〜」(変な動き)
「……大変なんですね」
「そうなんですよ。あ、もうそろそろ行かなきゃ。…あんぱん、みんなでおいしくいただきました。おいしかったです。あれまた食べたいなあ。」
そう言って小人は去って行った。
「おいしかった…?集めてるんじゃなかったの?なんだか胡散臭いなあ…」
テーブルの上のお皿を見た。そこにあんぱんはなかった。f:id:spott7:20161023225221j:image